当研究室博士課程のMohamed Elsaroukhさんが2025年11月24日に第21回Asia-Pacific Vibration Conference (APVC2025)で講演しました.諸事情により現地参加が叶わず,実行委員会のご厚意によりリモートでの発表となりました.APVC2026の実行委員会の皆様方には感謝申し上げます.

題目は, Identification of seated postural control system during horizontal seat sway(座位の水平揺動中の姿勢制御の同定)というもので,座位で床面を前後方向に水平揺動したときに,臀部下と足下のフォースプレートから得られる力計測値から上半身の重心位置を推定し,その応答に基づいて個人のバランス制御則を同定するという内容です.
我々は立位で同様の研究を行っていますが,これを座位でも行うメリットとして,前庭機能の感度を調べられる点が挙げられます.
腰を曲げられる立位とは異なり,座位では運動の自由度がないので,支持面を揺らすときに上半身の鉛直を保つのか,(地面の揺動に対して)上半身を傾けて頭部加速度を抑制するのか,という相反する2つの課題に対峙することになります.そのような戦略の個人差を前庭機能の感度とみなすことで,前庭の感度を定量化できます.
前庭機能のわずかな違いを調べることの意義として,片足立ちの得手不得手や乗り物酔いの酔いやすさには個人差がありますが,これらには前庭機能(耳石器と半規管)の感度が関係すると我々は考えています.一方,前庭機能の評価法として,Vemp(耳石器)やvHIT(半規管)が近年活用されていますが,機能不全のような比較的大きな違いは可視化しやすいものの,程度の細かな違いを表すことは難しいようです.本手法は健常者間の微小な前庭機能の違いを可視化する手法として,あるいは,乗り物酔いを抑制するための自動運転車の操舵制御法の開発指標として,今後活用できるように開発・検証を進めていきます.