2025年10月31日(金)と11月1日(土)に金沢市で開催された第23回日本神経理学療法学会学術大会にて,園部がポスター発表を行いました.

講演タイトルは,「フォースプレートと頭部慣性センサ計測に基づく立位の足関節・股関節戦略の定量的評価」というものです.これは,(株)テック技販と共同開発したバランス計測システムを使って,従来は概念的なものであった「足関節戦略」と「股関節戦略」をどの程度発揮しているのかを頭部加速度を基準に時系列で導出する技術を提案し,健常者を対象にどのように股関節戦略を駆使しているのかを明らかにする内容でした.
発表については,多くの方から貴重なご意見を伺うことができ,検討課題が複数あることを認識しました.また,我々工学者がこの分野に寄与するためには,「実用性」と「信頼性」を両立した計測法や解析法を開発・提供する必要であること(我々にはそれしかできない)を改めて認識しました.
(株)テック技販も展示ブースに出展し,開発したバランス評価システム(CoMBalance)を紹介していただきました.従来から重心動揺計(スタビロメータ)と呼ばれる足圧中心(圧力中心,COP)を計測するシステムは広く普及していますが,本システムは計測値を増やすとともに,力学法則を介して直接計測しないデータも推定できる新しい概念を導入しています.従来法と比較したアドバンテージは明確なのですが,これまでになかった計測・評価システムということで,普及には少し時間がかかると思います.医師や理学療法士をはじめとする医療従事者の皆様のお役に立てるように,システムの改善を図っていきます.
今回初めて理学療法系の学会に参加させていただきましたが,2000名を超える参加者の多さに圧倒されました.工学系では参加者は年配の教員と若い学生みたいな形になるのですが,医学系の学会は圧倒的に実務者が多いと思いますし,理学療法系は特にそれが顕著だと思います.講演では,脳卒中やパーキンソン病の患者さんのバランスや歩行に関する症例報告などを拝見しました.園部の持論になりますが,良い介入のためには正確な評価が必要で,バランスや歩行の評価ついては工学が携わることで現状より改善できる余地が大きいと思います.
夜は日本前庭理学療法学会の皆様に懇親会にもお誘いいただき,「熱い」ご意見を多くいただきました.繰り返しになりますが,工学系の人間もこの分野に直接的に貢献するために,実用的かつ信頼性の高い技術を提供できるよう努めていきます.
最後になりますが,貴重な機会をご提供いただきたことについて,本講演会の運営いただきました実行委員会およびスタッフの皆様に心から感謝申し上げます.