「すごい」と言われる実力をここで:着任10年の節目に

2026年の新年度が始まりました.
4月3日に爽やかな天気の中で高知工科大学の入学式が挙行されました.ご入学された皆様,おめでとうございます.
新たにインドネシアよりHartonoさんが博士課程に入学し,我々の研究室に入ってきました.Elsaroukhさんに続いて研究室2人目の博士課程の学生になります.これに伴い,研究室ホームページのメンバーの更新も行いました.

園部の個人的な話になりますが,この4月で2016年4月に高知工科大学に着任してからちょうど10年になりました.職階も講師→准教授→教授とステップアップしてきましたが,10年前と比べると個人的に大きな変化があったと思います.

  • 研究力の強化:本来の機械工学分野から,医学分野に進出しました.病気を治したいという情熱の高い医学系の先生方からお声がけいただき,自分の専門から少しはみ出て対応しているうちに,複数の機関との共同研究が実現しました.また,それに伴って外部資金が獲得できるようになってきました.ここ数年は少しずつですが,研究成果を国際学術誌への発表ができています.
  • 講義での教える力の改善:主に専門である機械力学系の講義を担当し,少しずつ講義の内容の改善に取り組んできました.コロナ禍では,マスクで受講者の表情が読み取れず,退屈しているのか,内容がわからないのかを推測しながらの苦しい講義でした.マスクが外れた時は,本当にほっとしました.様々な工夫の甲斐もあって,学生投票による優秀教員賞を受賞する機会をいただいたこともありました.
  • 研究室運営の改善:学生が考えて研究を進められるようにボトムアップ型教育の導入を行っています.最近は,特に学生の心理的安全性を心がけた運営に努めています.まだ発展途上ですが,修士課程の学生が論文を書いて,一流の国際学術誌に投稿するレベルにはなってきました.

このような変化の背景には,高知工科大学のやや風変りな方針と,同じ分野の先駆者であった前任の井上喜雄先生のご助言・サポートがあったことが大きいです.率直に言って,私は幸運だったと思っています.

以下では,若手研究者と学生さんを対象にして,私が思う高知工科大学のメリットを説明したいと思います.主観が入りますが,ご容赦ください.


まず,若手を中心とした研究者向けに,高知工科大学の説明をします.
私が感じるこの大学の特徴は以下の3つです.

  • 研究費:大学から支給されるベース研究費が多いです.着任直後の初期費用だけでなく,継続的に比較的手厚い研究費が支給されます.加えて,研究プロジェクトへの資金サポートも手厚いです.また,研究室の広さや設備も整っており,それによって外部資金の獲得がかなり有利になりました.さらに,国籍を問わず,博士課程学生へのサポートも手厚いと思います.
  • 教員評価システム:大学のホームページでも公開されていますが,本学には独自の教員評価(ポイント制)システムがあり,教育・研究・学内業務の貢献が数値化されます.教員側の立場としては厳しさを伴う制度ですが,この明確なルールによって学内業務や講義の負担が特定の教員に集中しないという合理的な仕組みが機能しています.年齢や職階に関わらず十分なベース研究費が確保されるため,ベテラン教員も若手教員も研究に取り組めるフェアなシステムになっています.
  • 研究評価の方針:既存の研究の延長ではなく,「新しい分野を築くこと」を特に評価する基本方針があります.若手の先生でも研究室を独立で運営できるので,新しい分野の研究に自分の方針で取り組むことができます.上記の研究費はこれを実現するためのものとも言えます.

以上より,「新しい研究をしたい」,「アイデアはあるが資金やスペースがない」,「学内業務を振られやすい」といった特徴を持つ研究者(私?)にはぴったりです.任期制や評価システムなど不安に感じる点もあると思いますが,適性のある方にはやりやすいシステムだと思います.ただ,このように研究環境を整えながらも,高知工科大学には「教育を最重要視する」というもう一つの方針があります.それは,次の学生さん向けの説明で述べます.


次に,今所属している学生や,高校生以下も対象とした説明になります.
有名大学や都市部の大学に比べると,知名度や利便性に劣るのは事実だと思います.一方で,以下の点に関しては地方大学の枠組みを超えた恵まれた環境があると思います.

  • 抜群の環境:キャンパスの建物が素晴らしいです.私は香美キャンパスの教員ですが,研究室のスペースが広く,研究や実験を行う上で十分な環境が与えられています.上述のように研究予算もあるので,学生がやりたい研究をサポートできる基盤があります.
  • 強力な研究者の存在:教員の実力が発揮しやすい環境なので,世界を舞台に挑戦し続ける,志の高い研究者が集まっています(私自身もそうありたいと日々努めています).学生のみなさんが望めば,在学中に世界的にみても新たな成果となる研究ができるチャンスが十分にあります.
  • 教職員のスタンス:高知工科大学は研究力が高い大学なのですが,その基本方針はあくまで「学生ファースト」です.本学のシステムでは教育への貢献もきちんと評価されるため,その結果として学生のみなさんに丁寧かつ熱心に指導するスタイルの先生方が揃っています.学生を尊重するスタイルが学風として浸透しており,事務職員さんも同様です.現代は,多くの組織で若い人に丁寧に接する風潮が広がっていますが,高知工科大学はそのような風潮になる以前からこの方針を貫いてきた大学だと思います.

所属する大学名だけで「すごい」といわれることは少ないかもしれません.その代わり,この環境を活かせれば,学生時代を振り返ったときに誰からも「すごいね」と言われるような成果を残す可能性が十分にある場所だと思っています.


あくまで園部の主観なので,別の考えを持つ先生や学生もいると思いますが,個人的には高知工科大学は「やりたいけどできない」といった閉塞感を感じにくい組織だと思います.
一方で,「名前だけで周囲からちやほやされて,楽しいところ」ではありません.
教員であっても学生であっても,自分の実力でキャリアを築いていく志向を持つ方に向いているところだと思っています.

私自身は商船高専から教員としてのキャリアをスタートさせたこともあり,元々教育的志向が強いと思います.自ら考え,実行し,修正できる人材の育成を目指し,学生の志向を尊重しながら教育活動を改善し続けたいと思います.一方で,研究面では,新しい取り組みをやっているうちに,機械工学系で医療分野の視点で解析ができる人材としての希少性が上がってきたと認識しています.身体の運動解析を通じて,医療分野,体育分野,ロボティクス分野,自動運転開発など,世界の研究に役立つ成果を今後も上げていきたいと考えています.